通夜
通夜とは
通夜は本来、故人とごく親しかった人たちが葬儀の前夜、一晩故人に付き添い、邪霊の進入を防ぎ、故人との別れを惜しむ儀式でした。しかし近頃では、告別式に参加の出来ない弔問客を迎え、1〜2時間程度で終わる半通夜とすることがほとんどです。
来の意味での通夜は、本通夜の前日の仮通夜か本通夜の一般弔問客が引き取った後に行うことが多く、夜通し灯明と線香の火を絶やさない昔ながらの習わしを守る風習が多く残っています。
通夜・葬儀の日取りが決定したら、まだ知らせていない関係者への連絡も忘れずに行いましょう。
通夜の準備(式開始前の準備)
自宅宿泊の親族への朝・昼食の手配
夕食、通夜ぶるまいの食事の手配は多すぎても、少なすぎても困るものです。親族などの食事の手配は正確な人数を把握しましょう
訃報を聞いて駆けつけた親族が喪家に宿泊する場合は、翌日(通夜当日)以降の手配が必要になります。
さらに、昼食や夕食などには、喪家以外のホテルなどに宿泊する近親者の分も用意しなければなりません。その際に肝心なのは「何人分必要なのか」という正確な人数を把握しておきます。
葬儀においては、総費用の実に3分の1が食事代とも言われており、多すぎると無駄な出費がかさむことになりますし、足りない場合は相手に対して失礼になってしまうので、多少の予備を用意しつつ、ある程度正確な人数を把握しておくことが大切です。
ただし、いくら自宅といっても、弔問者への接待や葬儀社との打ち合わせなど、喪主や施主は何かと忙しくそこまで手が回らないのが実状です。遺族または世話役の中で「食事係」を決め、葬儀社や仕出し屋に依頼する場合は早めに連絡しておきしましょう。遺体を棺に納める前に行う「湯灌」は、自宅の場合は葬儀社が代行してくれることもあります。
湯濯と納棺の儀
遺体は通夜の前日、もしくは通夜当日の午後くらいに納棺されます。最近は「納棺師」と呼ばれる人が行ったり、葬儀社が代行するケースも増えているようですが、一般的には葬儀社のスタッフの指示のもとで遺族、親族の手で行われます。
また、遺体を棺に納める前には、遺族が湯水で死者を清める「湯灌」を行います(※湯灌の最中は、線香と鐘を絶やさずに行う習わしです)。そして湯灌が済んだら、遺体を清潔な浴衣などの白装束(※全身白づくめの装束/経帷子・木綿の手甲・脚絆・足袋・六文銭入りの頭陀袋・わらじ・杖・編み笠)に着せ替えます。
その際には、装束を左前に着せて帯は縦結びにし、足袋は小鉤を取って左右逆に履かせます。最近では納棺の際に遺体の上にかけるだけというのが増えています。その場合、生前に故人が愛用した服や希望していた衣服があればそれを着せてあげるとよいでしょう。さらに髪を整え、目や口を閉じておだやかな顔にし、爪を切り揃え、死に化粧を行います(※男性の場合はひげを剃り、女性や子どもの場合は薄化粧をして、紅をさし、故人へのはなむけとします)。
病院がこの段階まで整えてくれることもありますが、葬儀社が行うことも一般的です(※葬儀社が提供する白装束を用いるのも現在は一般的になっています)。その後は、故人の愛用していた思い出の品物を棺に納め、最後に白菊などの生花で遺体の周囲を飾り、棺はくぎを打たずに蓋をして「棺掛け」と呼ばれる布で覆い、祭壇に安置します。
ただし、地域によっては、火葬で焼け残りそうなガラスや金属、陶器、時計、ぶ厚い書物などは制限されることもあり、品物いよっては、燃焼したときに有害物質が発生するおそれがある物もありますので、事前にもしくは火葬場に行ってからでも、その辺を確認しておいた方がよいでしょう。
僧侶へは「御車代」と「御膳料」
僧侶へは「御布施」とは別に「御車代」や「御膳料」を包むのが慣例。「御車代」は足を運んでもらったことへのお礼。また、食事を用意しなかった場合や、僧侶が食事を辞退した場合には「御膳料」を包みます。遠方から来てもらうときには実際の交通費よりやや多めに包む。
一般的目安としては「御車代」は5000円〜1万円、「御膳料」は5000円。
※尚「御車代」は送迎する場合は不要です。通夜当日は自宅留守番役を決めて、自宅弔問者や斎場の問い合わせなどにも対応しましょう。
斎場へ遺体搬送
自宅留守番役の取り決めをしましょう
通夜の前に故人の遺体は斎山に運ばれ、祭壇に安置されます。
その際世話役代表者は、斎場を知らずに自宅に訪れた弔問者の接待や電話での問い合わせなども予測して、遺族が自宅を留守にする時の留守役として世話役の中から二人残すように手配します。
そして、斎場には通常喪主、葬儀委員長、世話役が2〜3時間前に入り、僧侶や葬儀社のスタッフと打ち合わせをしたり、供物や供花を並べる順位の確定をします。
また、この時ほとんどは、遺族、葬儀委員長、世話役などが先に簡単な夕食(おにぎりにおかずが付いたお弁当が多い)を済ませてから通夜に臨みます。その後喪主や遺族は、受付開始前には身支度を整えて会葬者の弔問を受けます(※僧侶や弔問客の出迎えや見送りは、世話役にまかせましょう)。この時世話役は、香典の金額などを記入する帳簿や会葬礼品、会葬礼状などの準備も忘れずに行いましょう。
夕食、通夜ぶるまいの食事の手配
「通夜ぶるまい」に必要な食事と飲物の手配は葬儀社などへ相談し、人数の確認も早めにしましょう
儀式の終了後には、居残っている親族や会葬者、葬儀委員長、世話役など、お世話になった方々に遺族が「通夜ぶるまい」という食事や飲物を用意して労をねぎらいます。
最近は簡略化して必ずしも「精進料理」にこだわらず、オードブルや折り詰めを利用するケースが増えています。
通夜(当日)
祭壇・会場設営(葬儀社)
供物や供花の数も多いので、早めに順位の確認をしましょう
祭壇や会場の設営は、ほとんどが葬儀社で行ってくれますが、届けられた供物や供花を並べる順番は、世話役などが喪主や遺族に確認しながら決めなければなりません。一般的には、血縁の近い順に、故人との関わりの深い順に、棺の近くから並べていきます。
一般的には、喪主、遺族、葬儀委員長、世話役は通夜の2時間前に会場に入って準備を整えますが、規模が大きな場合は、2時間半から3時間前には会場に入いり、準備に当たった方がよいでしょう。
受付、会計、駐車場係などの役割分担も最終的にチェックし万全を期して通夜に臨みます
世話役、葬儀委員は各自の役割を最終チェック
早めに会場に来る人のことも考え、世話役や葬儀委員長などは、受付係、会計係、駐車場係などの役割分担についても早めに最終的なチェックをしておくことが必要です。
中でも香典の管理は慎重に行う必要がありますので、保管方法や、斎場から金庫を借りた場合の鍵の管理については、後でトラブルがおきない様、喪主や遺族と十分話し合っておきましょう。
また、その際翌日の告別式や後日の支払いのときに必要となる重要な書類や香典リストなども、金庫に一緒に入れておくと、いざという時にもすぐ手に取ることができるので便利です。どうしても世話役やお手伝いの人が足りない時は、斎場や葬儀社の方で人員を補充してくれることもあるので、まずは相談してみましょう。
さらに、通夜終了後に行う「通夜ぶるまい」の人数の把握も忘れずに。特に斎場と葬儀社が異なる場合は、連絡もれなどのないように事前に内容および追加や変更ができるのかも確認しておくことが大切です。
夕方5時与〜7時頃の間に始まる通夜。通常受付は一時間前、会場入りは30分前から行います。
受付
通夜は夕方5時〜7時頃の間に開始され、受付は遠方から来る人のことも考えて1時間前くらいに用意しておきます。その際、進行係は定刻の30分前に遺族を通夜会場に案内します。会葬者は定刻までに受付で挨拶をし、持参した香典を渡します。
僧侶到着
僧侶が到着したら、進行係が控室に案内し、茶菓子でもてなし、喪主、葬儀委員長、世話役代表などが挨拶をした後で通夜の内容の確認をします。
通夜の流れ
遺族、会葬者が席についたら、僧侶が入場し着席し読経が始まります。読経に要する時間は約30分〜40分程度です。
読経中、あるいは読経がすんでから僧侶、遺族、会葬者が順に焼香をします。近年では焼香台を席順に回す「回し焼香」を行うケースが増えているようです。
読経後または、焼香後に僧侶が短い法話をすることが多いです。僧侶が話しをしやすいようにあらかじめ故人の人となりを伝えておくとよいでしょう。焼香の合図は僧侶または司会者にまかせます。
法話が終わると僧侶が退場し、葬儀委員長が喪主同伴のもとで会葬者に挨拶をして終了。最後に会葬者が祭壇の前で再度焼香をし、喪主や遺族に挨拶して退場することもあります。この時は、喪主は席についたまま会葬者の挨拶を受けます。
その後は近親者のみが残って、灯明と線香を絶やさずに灯しながら、故人に一晩付き添う通夜が営まれます。
通夜終了後(通夜ぶるまいと翌日の準備)
通夜ぶるまい
「通夜ぶるまい」は「小夜食」とも言いますが、通夜式終了後に残っている近親者や会葬者、世話役の方に、食事や飲物をふるまうことです。
以前は精進料理が主流でしたが、飲食が目的ではないので、手軽につまめる程度のものを用意したり、最近の傾向としては仕出しや折り詰め、オードブル形式も多くなっているようです。また、中には通夜の会葬者が帰る時に缶ジュースなどを手渡すところもありますが、これは通夜ぶるまいの習俗が変化したものと考えられます。
通夜ぶるまいは、翌日の儀式に備え1時間程度で終わらせるのがよいでしょう。時間がきたら、喪主がお礼の言葉の述べ宴席を終えます。
読経・法話が終わった僧侶を招く場合は、まず控室に案内して茶菓子で労をねぎらい、通夜ぶるまいに案内します。この時には、翌日の告別式の打ち合わせもしておきましょう。
寺院や斎場で通夜をする場合
寺院や斎場で通夜を行う場合、遺族は僧侶や係の人に灯明を絶やさないように頼んで帰宅することもあります。寺院や斎場によっては、宿泊設備を備えているところもありますので、事前に問い合わせてみるとよいでしょう。
焼香後の挨拶例
父○○は、かねてより病気療養中でしたが、昨晩遅くに息を引き取りました。
長いわずらいではございましたが、眠るようなおだやかな最期でした。
皆様方には、生前、父がたいへんお世話になり、また、入院中はあたたかいはげましをいただき、厚く御礼申し上げます。
つきましては、ささやかですが、供養の席を用意いたしましたので、父をしのんでいただければと存じます。
通夜ぶるまいでの喪主の挨拶例
夫は60歳。決して長い人生とはもうしませんが、多くの皆様に支えられ、家族と仕事を愛し、満ち足りた人生であったと信じます。
夫は生来、明るい性格で、にぎやかなことが大好きでした。本日はこんなにも多くの方にお越し頂いて、本人もさぞかし喜んでいることと思います。
本当にありがとうございました。
なお、葬儀は明朝10時から、告別式は11時からでございますので、よろしくお願い致します。
香典の保管
香典の管理方法は遺族と確認し、重要な書類や香典リストも一緒に保管しましょう。
香典泥棒に合わないためにも、香典リストの管理および保管はしっかり行いましょう。その場合、大きな斎場では一時的に鍵付きの金庫を貸してくれるところもあります。
夜間時の保管についても、誰が預かるか、それとも斎場に預かってもらえるのかを確認しておくとよいでしょう。斎場に泊まる場合は、夜間時の緊急連結先などのチェックも忘れずに。
また、葬儀社によっては、香典と引き換えに会葬者に渡す会葬礼品(返礼品)の余った分を返品できるところもありますので確認をしましょう。翌日の告別式は呼び出し焼香に。夜のうちに焼香順位を確定し、弔電の整理もしよう。
葬儀・告別式での焼香順位や弔電順位の作成と読上者の選定
通夜が終わったら。喪主、遺族、葬儀委員長、世話役は、翌日の告別式の準備もしなくてはなりません。通夜は大体どこも同じような手順で行われますが、告別式での式次第は、宗派や、お寺によっても多少異なりますので、進行係が事前に確かめておくと安心です。葬儀社で司会・進行の見本を用意していることも多いので、係の人に相談してみるとよいでしょう。
また、告別式での焼香は呼び出し焼香になるのが一般的ですので、当日は会葬者に失礼のないよう、喪主や遺族と相談しながら、世話役などが夜のうちに焼香順位を決めておきましょう。その際、いただいた弔電の拝読順位の確定も忘れずに行います。
布団の手配
通夜の夜、故人に付き添う近親者は交代で寝ることになります。その際自宅で夜具が足りている場合はい間題ありませんが、せっかく遠方から駆けつけてくれた方に失礼にならないよう、余分な布団がない場合や斎場に泊まり込む時は、夜具の手配をすることも必要です。斎場や葬儀社に相談すれば、必要な数だけ手配してくれます。なお、翌日の朝食や昼食、忌中引きやその時お渡しする引物手配なども、通夜終了後に済ませておくことを忘れないようにしましょう。喪主や施主は、弔問客の接待や葬儀社および僧侶との打ち合わせなどで余裕がないのが実状ですので、この辺の確認を行う係もあらかじめ決めておくと手抜かりがありません。
葬儀の日(翌日)朝昼食の数確定
告別式に出席する人数が多い場合はバスの手配なども必要ですから、火葬場に行く人の数も事前に確認しておくとよいでしょう。さらに、火葬山場では係員が案内してくれますが、不安がある時は葬儀社に相談するのも良策。葬儀者の人が火葬場まで同行してくれるのかどうかも事前に確認しておきましょう。
自宅や斎場に泊まる人の夜具の用意、翌日の忌中引きの料理や引物の数も確認をしましょう。